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澤本指圧鍼灸院のブログ

高知県長岡郡本山町にある澤本指圧鍼灸院のブログです。

鍼灸の日によせて 本の紹介『がんと一緒にゆっくりと』(再掲)

※この記事は、Tumblrで私が書いていた澤本洋介のblog(2013/8/9)の記事に加筆修正し転載したものです。

今日8月9日は「鍼灸(はり・きゅう)の日」だそうです。
前のブログ記事梅酵素ジュースとコカ・コーラ~食の安全について には、同業である鍼灸師の皆様から様々なご意見を頂きました。「好転反応」という言葉を使うべきでないという意見については、「現実にある現象であり説明に不可欠」というご意見もいただきました。

今日は1冊の本の紹介を通じて、私が鍼灸師は好転反応という言葉を使うべきではないと考える理由を改めてご説明します。紹介する本は『がんと一緒にゆっくりと―あらゆる療法をさまよって』。著者は2006年に亡くなった元NHKアナウンサーの絵門ゆう子さんです。

がんと一緒にゆっくりと―あらゆる療法をさまよって

この本には、癌と診断された絵門さんが様々な民間療法をさまよった経緯が記されています。悪質な業者や施術者に大金を奪われ、最後には放り出されてしまう様子を読むと胸が苦しくなりました。

詳しくはぜひ本書を読んでいただきたいのですが、一連の経緯をご紹介します。

癌と診断された絵門さんは、西洋医学への強い不信から、民間療法を選択しました。
断食療法を試し、玄米菜食をおこない、奇跡を謳う健康器具や健康食品を大量に購入します。
その後、草の粉療法と気功整体に通い、波動治療を受けました。
業者や施術者は最初に「癌は必ず治る」と絵門さんに説明しました。
しかし症状は悪化します。
業者や施術者は「好転反応」という言葉を使い「良くなっていく過程で一度悪くなる現象です」と説明します。
しかし、癌は全身に転移してしまいます。
首の痛みを取るために受けたカイロプラクティックでは、癌が骨転移していた頚椎を骨折してしまいます。

癌が骨転移していたことを民間療法の施術者に告げると、優しかった態度が豹変します。
「あなたはMRIの邪気を受けてしまったからねえ」
「あなた受けたの邪気のために私の体までボロボロになってしまう。あなたの治療は割に合わない」

こうして、絵門さんは民間療法から放り出されました。

受話器から流れてくる気功先生の声が、弱りきった病人をぎりぎりまで生かした上で食い物にする得体の知れない怪物の唸り声であったことに、私はこの時やっと気がついた

絵門さんの経験は、民間療法被害の典型です。

「治ると断言」→「悪化したら好転反応と説明」→「患者に責任を押し付ける」
ホメオパシーとイトオテルミー療法により悪性リンパ腫の患者が死亡した「あかつき問題」も全く同じ経緯をたどっています。(私は鍼灸マッサージ師になる以前はイトオテルミーの療術師だったため、「あかつき問題」にも強い関心を持っています。)

「治ると断言」→「悪化したら好転反応と説明」→「患者に責任を押し付ける」
肩凝りでも腰痛でもアトピー性皮膚炎でも、民間療法ではこのパターンが繰り返されています。

絵門さんは民間療法に放り出された後、西洋医学の病院で適切な処置を受け、苦痛を緩和しながら約5年間の執筆活動や講演、テレビ出演など精力的におこなわれました。

絵門さんは民間療法について、こう振り返っています。

仮に悪い方向に体が変化するようなことが起きても「好転反応」という言葉でくくられてしまう。「良くなっていく過程で一度悪くなる現象で、我慢して続ければ必ず良くなります」と説明するのだ。それでも悪くなる一方の患者については、私の例で分かると思うが、どんな言い逃れも出来てしまう。

鍼灸の世界には古くから瞑眩(めんげん)という好転反応とほぼ同義の言葉があります。
現象として、「好転反応はある」と考えている鍼灸師は多いです。
鍼灸学校でも教わりました。私も「無い」と主張したいわけではありません。

ですが、どのように、その症状の悪化が本当の「好転反応」だとわかるのでしょうか?
好転反応と説明することは医師法に違反する「診断」ではないでしょうか?
(絵門さんに波動治療を行なっていたのは医師なので、医師ならば問題ないというわけではありませんが。)

好転反応という現象の実態はよくわかっていませんが、絵門さんのように、この言葉を「誤魔化し」や「言い逃れ」のセールストークに使われて健康被害を受けている方が現実に大勢おられます。
前のブログ記事に書いたように、「好転反応」という言葉は一般に広がり、多くの健康被害を生んでいます。

絵門さんは、これほど辛い目に会いながらもこうおっしゃっています。

あんなにひどい放り出され方をしても、まだなお民間療法の世界が、もっと成熟して成長してくれることを私は願っている。

絵門さんは、西洋医学の病院へ入院された後も、信頼する鍼灸マッサージ師については体と心を癒す効果を評価し、病院の医師と話し合い、鍼灸マッサージの往診を続けられたそうです。

イトオテルミーもホメオパシーもカイロプラクティックも、それぞれの施術に魅力を感じておられる方は大勢います。

私は、絵門さんが経験されたような被害を防ぎ、民間療法の世界が健全に成熟して成長するためにも、私達施術者は「好転反応」という言葉を使うべきではないと考えています。